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STORY

その町には、特別な桜があった。
夏に咲き乱れる摩訶不思議な桜の木。
町に住む人々は特別なその桜に幻想を抱いた。
この桜は人の願いを叶えてくれる。
いつしかそんな話が町にひっそりと根づいていた。

 

そして町の人々は、その夏に咲く桜のことを――「夏桜」と呼んだ。

久しぶりに訪れた故郷のことを、彼はほとんど覚えていなかった。
ぼんやりとした記憶はあっても、細かいことは何一つ覚えていない。
町に住む人々のことも、交流のあった仲の良い者達の事をかろうじて覚えている程度。
そんな薄れた記憶に戸惑いながらも、彼はこの夏を故郷で過ごす。

そしてその夏の果てで、彼は過去に残された願いに邂逅する……。

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